は異なり、さればいづれを計算の初となすべきかと疑へる者なればこれを裏面より見ればこの頃にても普通には便宜上歳の初を春の初となしたる事なるべし。されど朝廷の儀式にも特に立春の日を選びてする事あり。『公事根源《くじこんげん》』に
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供若水《わかみずをそなう》 立春日
若水といふ事は去年《こぞ》御生気の方の井をてんして蓋をして人に汲《くま》せず、春立つ日|主水司《もんどのつかさ》内裏《だいり》に奉れば朝餉《あさがれい》にてこれをきこしめすなり、荒玉の春立つ日これを奉れば若水とは申すにや云々
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とあるを見ても知るべし。平民社会にては立春の儀式といふ事は知らねど節分(立春前一夜)の儀式は種々ありて今日に至るまでその幾分を存せり。中にもこの夜各※[#二の字点、1−2−22]の年齢の数に一つ増したるだけの熬豆《いりまめ》を紙に包みて厄払《やくばらい》に与へ来年の厄を払はしむるが如きは明かに立春を以て計算の初となし立春に入る事によりて新たに齢一つを加ふる者と定めたるを見るべし。(陰暦の正月元日は立春に最も近き朔日《つい
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