を以て元義の歌の如何なるかはほぼこれを知る事を得べし。元義は終始万葉調を学ばんとしたるがためにその格調の高古《こうこ》にして些《いささか》の俗気なきと共にその趣向は平淡にして変化に乏しきの感あり。されど時としては情の発する所格調の如何《いかん》を顧みるに遑《いとま》あらずしてやや異様の歌となる事なきに非ず。例

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  高階謙満宅宴飲
天照皇御神《あまてらすすめらみかみ》も酒に酔ひて吐き散らすをば許したまひき

  述懐
大《おお》な牟遅神《むちかみ》の命《みこと》は袋|負《お》ひをけの命は牛かひましき

  失題
足引《あしびき》の山中|治左《じさ》が佩《は》ける太刀《たち》神代《かみよ》もきかずあはれ長太刀
五番町石橋の上で我《わが》○○をたぐさにとりし我妹子《わぎもこ》あはれ
弥兵衛《やひょうえ》が十《と》つかの剣《つるぎ》遂に抜きて富子《とみこ》を斬《き》りて二《ふた》きだとなす
弥兵衛がこやせる屍《かばね》うじたかれ見る我さへにたぐりすらしも
吾|独《ひとり》知るとまをさばかむろぎのすくなひこなにつらくはれんか
弓削破只《ゆげはただ》名二社在※[#「奚+隹
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