くば全体に佳句なき者として没書致すべく候。小生も追々衰弱に赴き候に付《つき》二十句の佳什《かじゅう》を得るために千句以上を検閲せざるべからずとありては到底病脳の堪ふる所に非ず候。何卒《なにとぞ》御自身|御選択《ごせんたく》の上御寄稿|被下候様《くだされそうろうよう》希望候。以上。[#地から2字上げ](二月十二日)
毎朝|繃帯《ほうたい》の取換をするに多少の痛みを感ずるのが厭《いや》でならんから必ず新聞か雑誌か何かを読んで痛さを紛《まぎ》らかして居る。痛みが烈しい時は新聞を睨《にら》んで居るけれど何を読んで居るのか少しも分らないといふやうな事もあるがまた新聞の方が面白い時はいつの間にか時間が経過して居る事もある。それで思ひ出したが昔|関羽《かんう》の絵を見たのに、関羽が片手に外科の手術を受けながら本を読んで居たので、手術も痛いであらうに平気で本を読んで居る処を見ると関羽は馬鹿に強い人だと小供心にひどく感心して居たのであつた。ナアニ今考へて見ると関羽もやはり読書でもつて痛さをごまかして居たのに違ひない。[#地から2字上げ](二月十三日)
徳川時代のありとある歌人を一堂に集め試みにこ
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