、上州《じょうしゅう》の干饂飩《ほしうどん》、野州《やしゅう》の葱《ねぎ》、三河《みかわ》の魚煎餅、石見《いわみ》の鮎《あゆ》の卵、大阪の奈良漬、駿州《すんしゅう》の蜜柑《みかん》、仙台の鯛《たい》の粕漬、伊予の鯛の粕漬、神戸の牛のミソ漬、下総《しもうさ》の雉《きじ》、甲州の月《つき》の雫《しずく》、伊勢の蛤《はまぐり》、大阪の白味噌、大徳寺《だいとくじ》の法論味噌、薩摩《さつま》の薩摩芋、北海道の林檎、熊本の飴《あめ》、横須賀の水飴、北海道の※[#「魚+而」、第3水準1−94−40]《はららご》、そのほかアメリカの蜜柑とかいふはいと珍しき者なりき。[#地から2字上げ](二月九日)

 十返舎一九《じっぺんしゃいっく》の『金草鞋《かねのわらじ》』といふ絵草子二十四冊ほどあり。こは三都をはじめ六十余州の名所霊蹟巡覧記ともいふべき仕組なれど作者の知らぬ処を善きほどに書きなしたる者なれば実際を写し出さぬは勿論《もちろん》、驚くべき誤も多かるが如《ごと》し。試みに四国八十八ヶ所|廻《めぐ》りの部を見るに岩屋山海岸寺といふ札所の図あり、その図|断崖《だんがい》の上に伽藍《がらん》聳《そび》えその
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