模様の意匠の如き、いよいよ出でていよいよ奇に、滾々《こんこん》としてその趣向の尽《つ》きざるを見て、素人も玄人《くろうと》も舌を捲《ま》いて驚かざるはなし。
 君の犬百題などを画くや、意匠に変化多く、材料の豊富なるは言ふまでもなけれど、中にも歴史上の事実多きを見て、世人は余らの窃《ひそ》かに材料を供給するに非《あらざ》るかを疑へり。しかしこは誤りたる推測なり。余は毫も君に材料を与へざるのみかかへつて君の説明によりて歴史上の事実を教へられし事少からず。とはいへ君は決して博学の人にあらず、読書の分量は余り多からざるを信ず。而して此《かく》の如く多方面にわたりて材料を得る者は平素万事に対して注意の深きに因《よ》らずばあらず。君の如く注意の綿密にしてかつ範囲の広きはけだし稀なり。
 画く者は論ぜず、論ずる者は画かず。君の如く画家にしてかつ論客なるは世に少し。もし不折君の説を聞かんと欲せば一たび君を藤寺《ふじでら》横丁の画室に訪へ。質問いまだ終らざるに早く既に不折君の滔々《とうとう》として弁じ初むるを見ん、もし傍より妨げざる限りは君の答弁は一時間も二時間も続くべく、しかもその言ふ所条理|井然《せ
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