諧大要』に言水《ごんすい》の
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姨《うば》捨てん湯婆《たんぽ》に燗《かん》せ星月夜
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の句につきて「湯婆に燗せとは果して何のためにするにや」云々と有之《これあり》候、その湯婆につき思ひ当れるは、当地方にて銚子《ちょうし》の事をタンポと申候事にてお銚子持つて来いをタンポ持つて来いと申候、これにて思ふに言水の句も銚子の事をいへるにて作者の地方かまたは信州地方の方言を用ゐたるには非《あらざ》るかと存《ぞんじ》候云々
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 この解正しからん。[#地から2字上げ](五月二十七日)

 今は東京の小学校で子供を教へて居る人の話に、東京の子供は田舎の子供に比べると見聞の広い事は非常な者であるが何事をさせても田舎の子よりは鈍で不器用である、たとへば半紙で帳面を綴《と》ぢさせて見るに高等科の生徒でありながら殆ど満足に綴ぢ得る者はない。これには種々な原因もあらうが総ての事が発達して居る東京の事であるから百事それぞれの機関が備つて居て、田舎のやうに一人で何も彼もやるといふやうな仕組でないのもその一原因であらう、これは子供の事ではないが余は東京
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