の国も特別に赤くそめられてあり。台湾の下には新日本と記したり。朝鮮満洲|吉林《きつりん》黒竜江《こくりゅうこう》などは紫色の内にあれど北京とも天津とも書きたる処なきは余りに心細き思ひせらる。二十世紀末の地球儀はこの赤き色と紫色との如何《いか》に変りてあらんか、そは二十世紀|初《はじめ》の地球儀の知る所に非《あら》ず。とにかくに状袋箱の上に並べられたる寒暖計と橙と地球儀と、これ我が病室の蓬莱《ほうらい》なり。
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枕べの寒さ計《ばか》りに新年の年ほぎ縄を掛けてほぐかも
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[#地から2字上げ](一月十六日)

 一月七日の会に麓《ふもと》のもて来《こ》しつとこそいとやさしく興あるものなれ。長き手つけたる竹の籠《かご》の小く浅きに木の葉にやあらん敷きなして土を盛り七草をいささかばかりづつぞ植ゑたる。一草ごとに三、四寸ばかりの札を立て添へたり。正面に亀野座《かめのざ》といふ札あるは菫《すみれ》の如《ごと》き草なり。こは仏《ほとけ》の座《ざ》とあるべきを縁喜物《えんぎもの》なれば仏の字を忌みたる植木師のわざなるべし。その左に五行《ごぎょう》とあるは厚き
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