飯待つ間
正岡子規
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)故《ゆえ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]
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余は昔から朝飯を喰わぬ事にきめて居る故《ゆえ》病人ながらも腹がへって昼飯を待ちかねるのは毎日の事である。今日ははや午砲が鳴ったのにまだ飯が出来ぬ。枕もとには本も硯《すずり》も何も出て居らぬ。新聞の一枚も残って居らぬ。仕方がないから蒲団《ふとん》に頬杖《ほおづえ》ついたままぼんやりとして庭をながめて居る。
おとといの野分《のわき》のなごりか空は曇って居る。十本ばかり並んだ※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]頭《けいとう》は風の害を受けたけれど今は起き直って真赤な頭を揃えて居る。一本の雁来紅《はげいとう》は美しき葉を出して白い干し衣に映って居る。大毛蓼《おおけたで》というものか馬鹿に丈が高くなって薄赤い花は雁来紅の上にかぶさって居る。
さっきこの庭へ三人の子供が来て一匹の子猫を追いまわしてつかま
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