土達磨を毀つ辞
正岡子規
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)急須《きゅうす》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)心|切《せつ》なり
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(例)[#ここから4字下げ]
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汝もといづくの辺土の山の土くれぞ。急須《きゅうす》となりて茶人が長き夜のつれづれを慰むるにもあらねば、徳利となりて林間に紅葉を焚《た》くの風流も知らず。さりとて来山が腹に乗りて物喰はぬ妻と可愛がられたる女人形のたぐひにもあらず。過去の因業《いんごう》いまだ尽きず、拙《つたな》きすゑものつくりにこねられてかかる見にくき姿とはなりける。むつかしき頬《ほお》ふくらしてひたすらに世を睨《にら》みつけたる愛嬌《あいきょう》なさに前の持主にも見離され道端の夜店に埃《ほこり》をかぶりて手のなき古雛《ふるびな》と共に淋《さび》しく立ち尽したるを八銭に代へて連れ帰り、新世帯の床の間に行脚《あんぎゃ》の蓑笠《みのかさ》に添へて安置したるは汝が一世の曠《こう》なるべし。然りしより後汝と一室を共にして相対することここに七年、朝にながめ、夕
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