も二つはもたぬなりけり
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 その貧乏さ加減、我らにも覚えのあることなり。
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ひた土に筵《むしろ》しきて、つねに机すゑおくちひさき伏屋《ふせや》のうちに、竹|生《お》いでて長うのびたりけるをそのままにしおきて
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壁くぐる竹に肩する窓のうちみじろくたびにかれもえだ振る
膝いるるばかりもあらぬ草屋を竹にとられて身をすぼめをり
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 明治に生れたる我らはかくまで貧しくなられ得べくもあらず。(「草屋」を「草の屋」と読ませ「草花」を「草の花」と読まする例、集中に少からず。漢語にはあらず)
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銭乏しかりける時
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米の泉なほたらずけり歌をよみ文をつくりて売りありけども
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 彼が米代を儲《もう》け出す方法はこの歌によりてやや推すべし。(「泉」は「ぜに」と読むべし)
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ある日、多田氏の平生窟より人おこせ、おのが庵《いお》の壁の頽《くず》れかかれるをつくろはす来つる男のこまめやかなる者にて、このわたりはさておけよかめりとおのがいふ
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