傍点]、机に[#「机に」に傍点]千文《ちふみ》八百《やお》ふみうづたかくのせて[#「ふみうづたかくのせて」に傍点]人丸《ひとまろ》の御像《みぞう》などもあやしき厨子《ずし》に入りてあり、おのれきものぬぎかへて[#「おのれきものぬぎかへて」に傍点]賤《しず》が[#「が」に傍点]著《き》るつづりおりに似たる衣をきかへたり[#「るつづりおりに似たる衣をきかへたり」に傍点]、此《この》時扇|一握《いちあく》を半井保《なからいたもつ》にたまひて曙覧にたびてよと仰せたり、おのれいへらく、みましの屋の名をわらやといへるはふさはしからず、橘のえにしあれば忍ぶの屋とけふよりあらためよといへり、屋のきたなきことたとへむにものなし[#「屋のきたなきことたとへむにものなし」に白丸傍点]、しらみてふ虫などもはひぬべくおもふばかりなり[#「しらみてふ虫などもはひぬべくおもふばかりなり」に白丸傍点]、●
かたちはかく貧《まずし》くみゆれど其《その》心のみやびこそいといとしたはしけれ、おのれは富貴の身にして大厦《たいか》高堂に居て何ひとつたらざることなけれど、むねに万巻のたくはへなく心は寒く貧くして曙覧におとる事更に
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