鎌倉一見の記
正岡子規

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)憑《よ》りて

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)(例)※[#「えんにょう+囘」、第4水準2−12−11]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)こゝも/\
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 面白き朧月のゆふべ柴の戸を立ち出でゝそゞろにありけばまぼろしかと見ゆる往來のさまもなつかしながら都の街をはなれたるけしきのみ思ひやられて新橋までいそぎぬ。終りの列車なるにはや乘れといふにわれおくれじとこみ入れば春の夜の夢を載せて走る汽車二十里は煙草の煙のくゆる間にぞありける。
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蛙鳴く水田の底の底あかり
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 藤澤の旅籠屋を敲いて一夜の旅枕と定む。朝とく目さむれば裏の藪に鳴く鶯の一聲二聲もうれしく、
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鶯やおもて通りは馬の鈴
鶯や左の耳は馬の鈴
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 いづれかよからん蕉風檀林のけぢめにやなど思ふも僭上の沙汰なるべし。一
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