の幻影早く著《いちじる》く現れ申候。且つ「ぼたん」といふ音の方が強くして、實際の牡丹の花の大きく凛としたる所に善く副《そ》ひ申候。故に客觀的に牡丹の美を現さんとすれば牡丹と詠むが善き場合多かるべく候。
新奇なる事を詠めといふと※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車、鐵道などいふ所謂文明の器械を持ち出す人あれど大に量見が間違ひ居り候。文明の器械は多く不風流なる者にて歌に入り難く候へども若しこれを詠まんとならば他に趣味ある者を配合するの外無之候。それを何の配合物も無く「レールの上に風が吹く」などゝやられては殺風景の極に候。せめてはレールの傍に菫が咲いて居るとか、又は※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車の過ぎた後で罌粟《けし》が散るとか薄がそよぐとか言ふやうに他物を配合すればいくらか見よくなるべく候。又殺風景なる者は遠望する方宜しく候。菜の花の向ふに※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車が見ゆるとか、夏草の野末を※[#「さんずい+氣」、第4水準2−79−6]車が走るとかするが如きも殺風景を消す一手段かと存候。
いろ/\言ひたき儘取り集めて申上候。猶ほ他日詳
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