候。又晴を祈る歌に
[#ここから4字下げ]
時によりすくれは民のなけきなり八大龍王雨やめたまへ
[#ここで字下げ終わり]
といふがあり恐らくは世人の好まざる所と存候へどもこは生の好きで/\たまらぬ歌に御座候。此の如く勢強き恐ろしき歌はまたと有之間敷、八大龍王を叱※[#「口+它」、第3水準1−14−88]する處龍王も懾伏《せふふく》致すべき勢相現れ申候。八大龍王と八字の漢語を用ゐたる處雨やめたまへと四三の調を用ゐたる處皆此歌の勢を強めたる所にて候。初三句は極めて拙き句なれども其一直線に言ひ下して拙き處却て其眞率僞りなきを示して祈晴《きせい》の歌などには最も適當致居候。實朝は固より善き歌作らんとて之を作りしにもあらざるべく只眞心より詠み出でたらんがなか/\に善き歌とは相成り候ひしやらん。こゝらは手のさきの器用を弄し言葉のあやつりにのみ拘《こだは》る歌よみどもの思ひ至らぬ場所に候。三句切の事は猶他日|詳《つまびらか》に可申候へども三句切の歌にぶつゝかり候故一言致置候。三句の歌詠むべからずなどいふは守株《しゆしゆ》の〈論〉にて論ずるに足らず候へども三句切の歌は尻輕くなるの弊有之候。此弊を救ふた
前へ
次へ
全38ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
正岡 子規 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング