あきまろに答ふ
正岡子規

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)有無《うむ》を

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)「も」の字|尽《ことごと》く

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)益※[#二の字点、1−2−22]
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「も」の字につきて質問に御答申候。「も」の字は元来理窟的の言葉にて、俳句などにては「も」の字の有無《うむ》を以て月並的俗句なるか否かを判ずる事さへある位に候へども、さりとて「も」の字|尽《ことごと》く理窟なるにも無之候。拙作に対する質問に答へんは弁護がましく聞えて心苦しき限りながら、議論は議論にて巧拙の評にあらねば愚意|試《こころみ》に可申述《もうしのぶべく》候。
「も」の字にも種類ありて「桜の影を踏む人もなし」「人も来ず春行く庭の」「屍《かばね》をさむる人もなし」などいへる「も」は殆《ほとん》ど意味なき「も」にて「人なし」「人来ず」といへると大差なければ理窟をば含まず、また「梅咲きぬ鮎《あゆ》ものぼりぬ」の「も」は梅と鮎
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