ズの項には、こうある。
「Henry Wiliams, Picture−restorer, son of Henry John Wiliams, commercial traveller.」
 絵画修復師《ピクチュア・レストアラア》という職業になっているが、額縁《がくぶち》の入れ換え修繕をしたり、絵の手入れや掃除をする、一種の骨董屋《こっとうや》の下廻りみたいなものであろう。実際ジョウジ・ジョセフ・スミスは、以前からブリストル市で骨董屋《こっとうや》をおもてむきの稼業にしているのだった。
 例によって、二人は教会を出るとすぐ、その足で近所の弁護士を訪問して、夫婦間の財産問題を「明白」にしておくことにした。この、結婚と同時に「必要な事務」を手早く片付けることはスミスの常套手段《じょうとうしゅだん》になっていた。結婚直後だと、女はまだ浮々しているし、それに、これから新生活にはいるつもりでおおいに意気込んでいるところだから、万事彼の思うとおりに取り決め易いというのである。ところが、このベシイ・マンディの場合には、弁護士のもとへ行って初めてヘンリイ・ウイリアムズは一つの驚きを味わわされた。そ
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