夜汽車
牧逸馬

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)市伽古《シカゴ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)六十|弗《ドル》

[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)[#ここから3字下げ、37字詰め]
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[#ここから3字下げ、37字詰め]
 私が在米中の見聞から取材した創作でして、あちらの生活に泡のように浮んでは消える探偵小品的興味を、私の仮装児ヘンリイ・フリント君に取扱わせた短篇の一つでございます。
[#ここで字下げ終わり]

 大戦当時の英国首相クライヴ・ジョウジ氏の大陸旅行の一隊に市伽古《シカゴ》まで追随して、大政治家の言行を通信する筈だった、紐育自由新報《ニューヨークフリイプレス》記者ヘンリイ・フリント君は、社会部長マックレガアの電報を紐育州バファロウで受取ると、明日はナイヤガラの瀑布を見物して、癈兵院で演説しようという名士の一行から別れて、ひとり紐育へ引返すことになった。
 電文は簡単で何んな事件が突発したのか判らなかった。それだけフリント君は不平で耐らなかった。靴へ少し水をかけた黒人の列車ボウイを危く殴り飛
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