#「らっぱ」に傍点]などという消防関係の男たちがしじゅう植峰に出入りしていたがみんな意気振れば意気ぶるだけ田舎者ばかりで、ほんとに話せないねえとお八重はすっかり姐御《あねご》気取りで考えていた。
と、お八重に子供が出来たのである。まだ生れはしないけれど、自慢なほど痩せぎすなお八重のことだから、早くから人の眼についた。おいおい、もす――もす[#「もす」に傍点]は茂助の略称である――途法もねえ野郎だ、おめえだろう、おかみさんをあんなにしたのは。だの、もすさんも親方の面に泥を塗って、どうもはやえらいことをやらかしたもんだ、しかし、ああ落ちついてるのが不思譲だなあ、などという声が、十長[#「十長」に傍点]、機関[#「機関」に傍点]、鳶[#「鳶」に傍点]、巻車[#「巻車」に傍点]、らっぱ[#「らっぱ」に傍点]のあいだに拡がって行って、それがお八重の耳にも、茂助の耳にも、最後に峰吉の耳にも這入《はい》った。お八重はくすくす[#「くすくす」に傍点]笑っていたし、茂助は色男めかしてにっこりしたし、最後に峰吉は、黒子《ほくろ》の毛を引っばりながら、重ねておいて四つにするという古い言葉を思出して、ちょっ
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