上海された男
牧逸馬
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)夜半《よなか》に
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大|卓《テーブル》の上に
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#ローマ数字1、1−13−21]
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※[#ローマ数字1、1−13−21]
夜半《よなか》に一度、隣に寝ている男の呻声《うめきごえ》を聞いて為吉《ためきち》は寝苦しい儘、裏庭に降立《おりた》ったようだったが、昼間の疲労《つかれ》で間もなく床に帰ったらしかった。その男は前日無免許の歯医者に歯を抜いて貰った後が痛むと言って終日不機嫌だった。為吉が神戸中の海員周旋宿を渡り歩いた末、昨日《きのう》波止場に近いこの合宿所へ流れ込んで、相部屋でその男と始めて会った時も、男は黙りこくって、煩《うるさ》そうに為吉を見やった丈《だ》けだった。
彼は近海《きんかい》商船の豊岡丸《とよおかまる》から下船した許《ばか》りの三等油差しだという話だった。遠航専門の
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