助五郎余罪
牧逸馬
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)慶応《けいおう》生れ
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)笛の名人|豊住又七《とよずみまたしち》
[#]:入力者注 主に外字の注記や傍点の位置の指定
(例)ちょぼ[#「ちょぼ」に傍点]一仲間
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一
慶応《けいおう》生れの江戸《えど》っ児《こ》天下の助五郎《すけごろう》は寄席《よせ》の下足番《げそくばん》だが、頼まれれば何でもする。一番好きなのは選挙と侠客《きょうかく》だ。だからちょぼ[#「ちょぼ」に傍点]一仲間では相当な顔役にもなっているし、怖い団体にも二つ三つ属している。
「一つ心配しやしょう」
天下の助五郎がこう言ったが最後、大概《たいがい》の掛合いは勝ちになる。始めから棄身なんだから暴力団取締の法律なんか助五郎老の金儲けにはすこしも影響しない。その助五郎が明治湯《めいじゆ》の流し場に大胡座《おおあぐら》をかいて、二の腕へ刺《ほ》った自慢の天狗の面を豆絞《まめしぼ》りで擦りながら、さっきから兎のように聞き耳を立てているんだから事は穏かでない。正午近い銭湯はすい
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