《ばち》を合せて行くうちに、一調一高《いっちょういっこう》、又七の笛は彼の三味を仇敵《かたき》にしていることが解って来た。そして、満座の中で何度となく彼は糸を切らせられたのである。しかも、新しい名取りの声は、旱《ひで》りの後の古沼のように惨めにも嗄《か》れて終《しま》った――。
それから四日経って又七の遭難。
こんなことには慣れているだけ、助五郎にはすべてが判った。和泉屋だって雷門だって世間態もあれば警察もこわい。で又七代理と偽って和泉屋と雷門の二軒へ据わりこんだ助五郎は大枚の金にありついて、一と月程は豪気に鼻息が荒かった。
あとから小博奕で揚げられた時の、これは天下の助五郎脅喝余罪の一つである。
[#地付き](一九二六年十二月号)
底本:「「探偵趣味」傑作選 幻の探偵雑誌2」光文社文庫、光文社
2000(平成12)年4月20日初版1刷発行
初出:「探偵趣味」
1926(大正15)年12月号
入力:網迫、土屋隆
校正:noriko saito
2005年6月26日作成
青空文庫作成ファイル:
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