お定《きま》りだ。こうっ、ぶっつり[#「ぶっつり」に傍点]来たろう」
「恐れ入りやす、へっへ、何せ最初《はな》からあの仕末なんで、下方連中は気を腐らすわ、雷門は頭《つむじ》を曲げるわ、和泉屋さんはおろおろ[#「おろおろ」に傍点]するばかり、へっへっへ、仲へ立った私のお開きまでの苦労と言ったら――して、あなた様は何誰《どなた》で?」
「誰でもええやな」
助五郎は空を仰いで笑った。が、直ぐ、
「家元、大薩摩紛《おおさつままげ》えのあの調子で、一体何処が引っ切れたのか、そいつがあっしにゃ合点が行かねえ」
「へっへ、御尤《ごもっと》もで」望月は伴《つ》れの人柄をもう読んだらしく苦しそうに扇子を使いながら、
「へえ、切れやしたの何のって、へっへ、先ずあの」と一つ咳払いをして、「里の初《しょ》あけのほだされやすくたれにひと筆《ふで》雁《かり》のって、そのかりいの[#「かりいの」に傍点]で、へっへ、ぶつりとね、へえ、雷門の糸が――どうも嫌な顔をしましてな」
「それゃそうだろう」
「それからまあ高調子《たかちょうし》でどうやらこうやらずうっと押して行きやしたがな、二上《にあが》りへ変って、やぶうの―
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