》の声 (下手遠くより)しばらく、しばらくお待ちを――。
忽必来《クビライ》 おお、木華里《ムカリ》だ、木華里《ムカリ》が帰って来た――!
木華里《ムカリ》 (一同驚喜する中を駈け込んで来て)殿! およろこび下さい。ほどなくこれへ、合爾合《カルカ》様がお見えになります。
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みな歓声を揚げる。
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成吉思汗《ジンギスカン》 (嬉しさと悲しさが交錯して)そうか。合爾合《カルカ》が来る。そうか、合爾合《カルカ》が来るのか。(せせら笑って)手前《てめえ》が助かりたいばっかりに、大事な女房を捧げて命乞いする。ふふん、可哀そうに合爾合《カルカ》も、下らねえ男と一しょになったものだ。(哄笑)おい、皆聞いたか。数年越しのおれの恋を叶えに、いま合爾合《カルカ》が独りでここへやって来るそうだ。進発は見合せだ。どうでえ! 喧嘩に強い奴あ恋にも強いぞ。長の思いの霽《は》れる夕べだ。哲別《ジェベ》、速不台《スブタイ》、酒宴《さかもり》の支度をしろ。花嫁花婿のために、祝言《しゅうげん》の席を設けろ、あっはっはっは。
[#ここ
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