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一同は右往左往して準備にかかる。篝火《かがりび》は一度に燃え盛る。
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汪克児《オングル》 (成吉思汗《ジンギスカン》の前に進んで、妙な手つきをして月を仰ぐ)曇り、後晴れ。ああ、好い月じゃなあ。(自分へ)これ、外道、口が軽いぞ。(おのが口を抓《つね》って、蜻蛉返《とんぼがえ》りを打つ)
成吉思汗《ジンギスカン》 (独り言のように)長年想いを懸《か》けた女が来る晩に、軍《いくさ》などと、そ、そんな殺風景なことができるか。こんな、鎗だの、楯だの、(とそこらに組み合わせて立ててある武器、馬具などを蹴散らす)今夜あ、こんな物あ眼触《めざわ》りだ。婚礼の席には邪魔ものだ。早く片づけてしまえ。
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皆浮きうきしながら、焚火のまわりに獣皮を敷き、酒宴《さかもり》の座を設ける。
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成吉思汗《ジンギスカン》 (焦いらして)兵卒一同にも、今宵は振舞い酒だ。たんまり飲ましてやれ。
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消魂《けたたま》しい野犬の吠え声
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