思汗《ジンギスカン》は寂しそうに、ぼんやり立って考え込んでいる。小姓|巴剌帖木《パラテム》の捧げる兜を、無意識にかぶりながら、
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成吉思汗《ジンギスカン》 巴剌帖木《パラテム》。
巴剌帖木《パラテム》 (前に片膝ついて)はっ。
成吉思汗《ジンギスカン》 お前は、十四だったな。
巴剌帖木《パラテム》 (不思議そうに)は?
成吉思汗《ジンギスカン》 (優しく)いや、年齢《とし》は十四だったなと言うんだ。
巴剌帖木《パラテム》 はい。
成吉思汗《ジンギスカン》 (夢みるように)恋の花は、まだまだ固い蕾《つぼみ》だな。だが、初恋の女ができたら、すぐおれに言うんだぞ。必ず一緒にしてやるからなあ。初恋に敗れると、生涯砂漠の風が身に沁《し》みるぞ。(突然、叱りつける)馬鹿っ! 貴様、何を聞いているんだ!
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巴剌帖木《パラテム》はびっくりして後ろに退る。忽必来《クビライ》は銅鑼を持って下手に進み、まさに一打ち打とうとする時、
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木華里《ムカリ
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