しをいいことに、おれは、女一匹にこだわって――。(急に朗かに)あははははは、何を言ってるんだ。おれの女房は戦争だ。おれは戦争と結婚しているんだ。この成吉思汗《ジンギスカン》の恋人は、軍馬だ、弓矢だ、此剣《こいつ》だ! 敵の血だ! 砂漠の風だあ――! あははははは。
哲別《ジェベ》 殿!
成吉思汗《ジンギスカン》 相手にして面白いのは、乃蛮《ナイマン》の太陽汗《タヤンカン》だ。合撒児《カッサル》! あれを見ろあれを! 抗愛山脈の上で、月が招いているじゃあねえか。哲別《ジェベ》、忽必来《クビライ》、進軍だ、進軍だ! ああ愉快愉快! 者勒瑪《ジェルメ》、馬を引いて来いっ!
[#ここから3字下げ]
一同はいろめき立って出陣の支度にかかる。
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
汪克児《オングル》 (成吉思汗《ジンギスカン》の口真似)おれの女房は、この背中の瘤だ。おれは瘤と結婚しているんだ。この汪克児《オングル》の恋人は、瘤だ、踊りだ、踊りだ、瘤だ――あっはっはっは! (成吉思汗《ジンギスカン》の気を引き立てようと、滑稽に踊り廻る)
[#ここから3字下げ]
成吉
前へ
次へ
全94ページ中49ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング