が出たぞ。
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明るい月が地平を離れ、河の漣《さざなみ》を銀に彩っている。一同は口々に、「月だ、月だ、月が出た。」「さあ、出陣だ! 進軍だ!」と勢い込んでざわざわと起ち上り、月に向って立ち並ぶ。忽必来《クビライ》は長靴を穿き直し、武装を凝らして、速不台《スブタイ》とともにしゃがみ、剣の先で地面に地図を描き、しきりに軍議を練りはじめる。
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合撒児《カッサル》 木華里《ムカリ》はまだ帰らぬな。者勒瑪《ジェルメ》、軍馬の様子はどうだ。これからただちに札荅蘭《ジャダラン》城を屠り、長駆、抗愛山脈を衝くのだから、稗《ひえ》でも藁でも、充分に食わせておくがよいぞ。
者勒瑪《ジェルメ》 (主馬頭《しゅめのかみ》)仰せまでもございません。馬という馬は、栗毛も葦毛も、気負い立って、あれ、あのように、早く矢を浴びたいと催促しております。
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遠く近く、屯ろする軍馬のいななき。
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合撒児《カッサル》 忽必来《クビライ》、進撃の前だ
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