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木華里《ムカリ》 我軍の条件を入れて、即刻開城とあらば、あれなる七つの星の消えぬ先に、すぐさま囲みを解いて、眼ざす乃蛮《ナイマン》国へと進軍を開始するであろう。その場合は、札木合《ジャムカ》一家をはじめ、札荅蘭《ジャダラン》族の一人にも刃を加えませぬ。この儀は、大王|成吉思汗《ジンギスカン》、真白き駱駝《らくだ》にかけて誓います。
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避難民ら歓声を揚げて喜ぶ。この時、札木合《ジャムカ》の妃|合爾合《カルカ》姫が、二三の侍女を従え、そっと出て来て、誰にも気づかれず露台の円柱の陰に隠れ、ひそかに立ち聴いている。
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札木合《ジャムカ》 ううむ、降参すれば城も助かり、罪なき部落の者どもも、これ以上の苦しみから救われ、成吉思汗《ジンギスカン》はそのままこの城を後に、抗愛山脈へ向って進発する――(独語のように)ふうむ、降伏を拒絶すれば、わが札荅蘭《ジャダラン》族は根絶やし――だが、その降伏勧告にも、定めし条件があろう。条件を言え。
木華里《ムカリ》 (膝を進めて)
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