係員に就いて詳細に聴取するところから、このセンセイショナルな捜査の第一幕は切って落される。
「トランクが着くと直ぐ、警察へ言って呉れりゃあ宜かったのになあ」ライアン刑事が口惜しそうに、「今頃はもう犯人は立派に押さえていたよ」
 然し、アンダスン着荷係が言うには、変な臭いのする荷物が着いたからといって、一いち警察へ報らせていては遣り切れない。世の中には、変った人も多いから、思いもかけない奇抜な品物を思いも掛けない奇抜な包装で送るやつがあるというのだ。魚を鞄へ入れたり、鳥や、そうかと思えば愛犬の死骸などを、大事そうに見事なトランクへ詰めて出したり、――臭い荷物は、日に幾つとなく停車場を通過する。特に今のような狩猟のシイズンには、これは有り勝ちなことで、それにアリゾナ州は狩猟地でもある。勿論、そんな物を簡単な方法で汽車便で送ることは、規則違反ではあるけれど、実際はよくあることなのだった。
 秋の半ばだが、十月といえば、丁度亜米利加の詩ごころをそそる「|土人の夏《インディアン・サンマア》」――所謂日本の小春日で、ぽかぽかと暖い日が続き、陽気を違えて花が咲き出したりする。妙に生暖いのである。閉め
前へ 次へ
全68ページ中9ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング