、小児用の桃色の毛布の下に、素晴らしく美しい、若い女の首と胴が、別べつに這入って居た。ほかに、シイツの包みが二つあって、これは開けて見ると、生なましい、其の女の足だった。身体の中央部、胸から膝までは、トランクの中には無かった。此の若いほうの女は、写真で見ると、可成りの美人で、映画女優のルス・チャアタトンにとてもよく似ている。場所がハリウッドを控えた羅府なので、さては、映画関係?――それなら、途法もないジャアナリステック価値だというんで、最初新聞記者がぴくっと興奮して耳を立てたのも、無理ではない。
 羅府警察署から、さっそく停車場目がけてわんさと押し掛けて来る。今様シャロック・ホルムスの名あるポウル・スティヴンス警部、指紋係W・N・ヒルデブラント、刑事E・J・ベクテル等の顔ぶれ、これらは、すべて現在、同地の警察界に活躍している人々である。
 警察医の手に依って、この二人の女の屍体は、市の変死人収容所へ移される。殺人強力犯係ダヴィッドスン警部が駈け付けたのは、この時だった。
 先ず、その日の正午にチッキを持ってトランクを受取りに来た、若い二名の男女の容貌、服装、言語の特徴などを、応対した駅
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