び出て来ているアンドリウス氏と、ハリイ・ジョンソン。裁判長はいま言った、A・G・ロジャアス。
アリゾナ州立精神病院長ジョウジ・スティブンス博士が、ルウスの精神鑑定を行ったが別に異状は認められないと言うことだった。例のトランクが二つ法廷へ持出されたりして、亜米利加の裁判に特有の劇的場面を呈する。ルウスはけろりとしてトランクを眺めていたが、右手で左手の人さし指に、ハンケチの端を巻いたり解いたりしていた。物好きな新聞記者が、それを数えて、二百四十三回ハンケチを指へ巻きつけたと傍聴記事に書いている。
この裁判の間に、連日の興奮に疲れ切っているジュッド医師が大きな鼾を立てて、居眠りを始めた。それは実に大きな鼾で、検事の論告や弁護士の反駁やらで、騒然としている法廷内に、隅から隅まで鳴り響いて高く聞えた。
飽気に取られた廷丁が、そばへ寄って揺り起そうとすると、ロジャアス裁判長が、静かに止めて、
「起しちゃいかん。ジュッドさんを眠らして置き給え」
検事が一寸顔色を変えて、
「然し、裁判長、この神聖な法廷に於て鼾をかくとは――」
裁判長はにっこりして、
「神聖な法廷だからこそ、お気の毒なジュッ
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