有名な女殺人犯に、ルウス・スナイダアとジュッド・グレイがある。Ruth Snyder, Judd Gray ――不思議にもルウス・ジュッドは、この二人の名前を一つに集めているのだ。


 汚れたハンカチイフで眼を拭きながら、ルウスはこの徹夜の訊問に踏み応えている。涙で顔が洗われて、白粉《おしろい》が剥げたのを気の毒がって、課長の女秘書マデリン・ケリイが、自分のコンパクトを貸したりしているのだ。ルウスは、終始、神経的に震えて、鍵のかかった扉《ドア》の外にノックの音のする度びに、ぎょっとしてそっちを振り向いた。が、アリゾナの気候などを話している時には、可愛らしく微笑して、すっかり普通の時のように見える。その様子が如何にも態《わざ》とらしく、天性の俳優のように思われた。この、滑かな彼女の態度から、記者達はルウスに「天鵞絨《びろうど》の女虎」という新しい綽名を与えて、これが又新聞紙上を賑わしたものだ。
「台所で始まったんです」
 突然ルウスが言い出した。告白と見て、テイラア課長は緊張を隠し切れない。そっと秘書に合図をすると、マデリン・ケリイは紙に鉛筆を構えて、速記の支度をするのだ。
「あたしは
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