腰掛の蔭の床にスウツケイスと帽子函の遺留されてあるのが眼についた。確かではないが、その朝若い女が其処へ置いて、後から取りに来るからと言って出て行ったのだった。名札も附いていないし、頭文字《イニシャル》もないので、誰の荷物とも判定の下しようもないが、其処へ置き放しにする訳にもいかないので、掃除婦ベリイマンは、何心なく、そのスウツケイスの掛金に指を当ててみた。と、鍵が掛っていないで、ぱちんと、鍵が辷ったのである。いささかの好奇心も手伝って、ベリイマンがスウツケイスの蓋を開けて見ると――。

      4

 真っ赤なタオルに包んだ品物が押し込んである。怖ごわ開いた其のタオルの中から、ヘドウィッグ[#「ヘドウィッグ」は底本では「ヘッドウィッグ」]・サミュエルスンの身体の中央部が現れたのだ。二十五口径のコルトの自働|拳銃《ピストル》も緒にスウツケイスの底に発見された。
 翌早朝から捜査課長ジョセフ・F・テイラア氏が、自身ルウス・ジュッドの行方捜査に当ることになる。羅府《ロスアンゼルス》市内、若しくは同市を中心に十四、五哩の円を描いたその中に、ルウスはじっと息を潜めているものと捜査課は睨んだ。
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