ジュッド医師の言に依ると、ルウスはコカイン中毒者だったようでもある。それに悩んで、この悪癖から逃れるために、かなり苦しんで来たとのことだった。
「彼女をこの習慣から救うために、私は一生懸命でした。その点でも、彼女は私に感謝して、純真な愛を傾けて呉れたのです」暗然としてジュッド氏は口を結んだ。


 ジュッド氏の実妹のケリイ・ジュッドは、嫂《あによめ》の犯罪を聞いて、顛倒せんばかりに驚いて、「あり得べからざることだと思います。姉さん程、気持ちの平らな、感じの好い人は、この世の中に二人といない位いですのに――」
 このケリイに依れば、ルウスは又とない程美しい、青みがかった灰色の眼をして、睫毛と眉毛が長く、一種特徴のある魅力を備えているという、九年前にジュッド医師と結婚して、貧しいながら、実に仲の好い夫婦だったというのだ。


 このジュッド医師とケリイが訊問されている最中である。
 もう一つの恐ろしい発見が、矢張りロスアンゼルスの南太平洋鉄道停車場に於てなされた。
 ビュウラ・ベリイマンという掃除婦がある。
 夜行列車の発着も、ちょっと途絶えた深夜、帰宅の前に、婦人待合室を掃除していると、
前へ 次へ
全68ページ中33ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
牧 逸馬 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング