承知しない子供でした。今でもそうですが、私は小さい時分から自由を愛していたのです。
 私は寂しいんですの。お帰りになる日をお待ちしています。私はあなたを愛しています。愛の両手であなたをしっかり抱いていますわ。でも私、今夜はすっかり疲れていて、もう愛のことを書く気持ちになれません。一と眠りして身体が休まると、すぐあなたのことを思います。来週の水曜日か木曜日にはお帰りになれませんか。私ほんとにあなたを必要とします。お金もあんまりありませんのよ。或る人に十五弗胡魔化されてしまいました。口惜しくって、くやしくって――でも、この事は考えないことに決めていますの。
 狩りのシイズンで大変です。療養院のお医者さんも、四人で鉄砲をかついで出掛けて行きました。アリゾナの沙漠も、もうすっかり秋景色です。でも鹿は今年とても多いんですって。看護婦達も相談して、医務局の人達に負けずに、狩りに押し出そうかと言っていますの。私も行くとしたら、ちょっとお金が要りますわ。でも、私達のは、ちょっと午後行って、鳩を撃つ位いのものですから、沙漠の強烈な秋陽に照らされて来るばかりです。
 もう晩いのよ。一時ですの。まだ晩御飯を
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