潜んでいるようにと言うと、ルウスもその気になって、急に狼狽て出した。
「で、僕は、七丁目と広小路《ブロウドウエイ》の角で、自動車を停めて、姉を下ろしたんです。ルウスは直ぐ下町の雑沓に消えて行きました。それっきり会いませんし、ほんとに、何処へ行ったか知らないんです」
「何時お前は、義兄のジュッドさんに会いに、サンタ・モニカへ行ったのか」
「先刻です。九時半頃出掛けました。ことによると、もうあっちへ警官が廻っているかも知れないと思ったのですが、義兄の妹のケリイが台所に食事していて、まだ何も知らない様子でした。ジュッドさんは、風邪を引いて二階に寝ていましたが、すぐ下りて来て、三人で台所で胡桃を割って食べ乍ら話していたんです。そのうちに僕は、兄をそっと別室へ呼んで、今日のルウスの不思議な行動をすっかり話しました。良人ですから、きょうジュッドさんのところへルウスから電話でも来たかと思って訊いてみましたが、何も言って来なかったそうです。もう其の頃は、夕刊に、出て騒ぎになっていたんですが、義兄《あに》は未だ何も聞いていない風でした。そこで僕が戸外の自動車へ引っ返して、その夕刊を持って来て見せますと、
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