け持っていた。尋常四年生にもなって――だからそれは教育上の新施設として低能児学級に編制されたのである。彼らもまたせめては普通児なみの成績に近よらせたいために、それからそれがだめならば可能な限り職業教育を受けさせたいために――それはいい、けれども選りわけられたこの一群は邪魔なもの、不必要なものとして刻印を受けるにすぎないのではないか、あるいは収拾できないものを収拾させようとしてじつは…………………ぶち毀《こわ》そうと目論《もくろ》まれたのではないか――杉本は何とかしてこの子供たちも人並みにしたいと奮闘した、ここ数カ月のむだな努力を痛々しく思いだしてぶるんと頭をふりまわした。
 杉本は何も特別に低能教育の抱負や手腕を持っていたわけではなかった。彼にとってその仕事は偶然のようにあたえられた。誰だって楽な仕事の上で自分の成績をあげたいに決っている。だから学年始めが近づくと……………………………こそこそ校長の私宅を訪れた。そんな行動はおくび[#「おくび」に傍点]にも出さず、日が来ると彼らは受持学級ふり当ての発表を聞かされるのであった。この決定に異論を申したてることは許されませんぞ――と、教員の咽
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