十八世紀頃には大変はやつたもので即ち時粧となつたのである。
今では「ムーシユ」の流行は大分|衰《すた》つたやうだが、併しまだ全く無くなつたわけではない。今でも古典的《クラシツク》な舞踊、例へばムニユイ又は西班牙踊を踊る時には必ずこれを著けることになつてゐるやうである。又|平常《ふだん》でも艶美を増す為めに是を用ゐる婦人も少なくはない。だから巴里あたりの化粧品の商店には大小色々な形をした「ムーシユ」を売つてゐる。而してその「ムーシユ」の色合にも深黒、青黒、浅黒などと種々変つたのがある。婦人方は自分の皮膚の色や目の色や髪の毛の色などとその調和を保つに最も適した色合、即ち自分に一番よく似合ふ「ムーシユ」を撰んで是を貼附するのである。
併し現今では、「ムーシユ」の著け方は一八世紀頃とは大変違つてゐて、眼上三点の法則などに遵ふものは全くない。今では二つ以上は著けないやうだ。その一つは目の下の少し横の方と、下唇の右か左かへ一つ著けるのが普通に行なはれてゐるやうである。尤も、その人々の顔の形や目の色や髪の毛の工合と照し合せて、全体の調子を取る為めに上に述べた眼下、唇辺の定石以外の処、即ち頬部に著
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