けたり、頤に著けたりする婦人もある。だからどこぞと一定の場所を指示することは出来ないが、今その一例を挙げて見ると、目に愛嬌が足りないとか、又は下頤が長過ぎるとかいふ場合に、その間延びのした処へ一点のムーシユを入れるといふ工合である。
また「ムーシユ」は、啻に顔にばかり著けるのではない。婦人正装の場合、即ちデコルテの場合には、胸から肩から背中迄を露出するのであるから、「ムーシユ」を背中にも胸にも腕にも著ける。要するに黒と白とのコントラストを利用して全身にその艶美を増す為めの一つの化粧法なのである。
上に述べて来たやうに、東洋では「ほくろ」を贅物として邪魔物扱ひにし顰蹙してゐるのに反して、西洋では厄介視せず、否寧ろ是を艶美を増すところの「美の豆粒」として尊重し、人工的にさへ是を模倣するに至つた原因は何であるかを尋ねてみるに、臆説ではあるが、それは東洋人と西洋人との皮膚顔面の色や、毛髪や、眼の色を異にしてゐるのが、その第一の原因ではなからうかと思はれる。
東洋人の黄色い顔面に於ける「ほくろ」は、黄色と黒色との色調がそぐはぬので「ほくろ」があれば顔が却つて醜く見えるのである。加之、東洋
前へ
次へ
全14ページ中7ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
堀口 九万一 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング