チた。一体、薩摩は当時のいわゆる南蛮人が夙《はや》くから渡来した地方であるから、煙草の如きも比較的早くよりこの地方に伝播《でんぱ》して、喫煙の風は余程広く行われ、その弊害も少なくはなかったものと見えて、かの文之和尚の「南浦文集」の中にも、風俗の頽敗と喫煙の風とに関した次の如き詩を載せている。
[#ここから2字下げ、「一二」は返り点]
風俗常憂頽敗※[#「※」は「しんにょうに端のつくり」、第4水準2−89−92、65−8] 人人左衽拍二其肩一
逸居飽食坐終日 飲二此無名野草煙一
[#ここで字下げ終わり]
それで、島津氏も厳令を下して喫煙を禁止しようとしたのである。「崎陽古今物語」という書に次の如き記事が見えている。
[#ここから2字下げ、「レ一二」は返り点]
竜伯様(島津義久)惟新様(島津義弘)至二御代に一、日本国中、天下よりたばこ御禁制に被二仰渡一、御|国許《くにもと》之儀は、弥《いよいよ》稠敷《きびしく》被二仰渡一候由候処に、令《せしめ》二違背一密々呑申者共有レ之、後には相知、皆死罪に為レ被二仰渡一由候云々。
[#ここで字下げ終わり]
この如く違犯者を死刑に処するまでに厳重に禁制し
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