トおり、またその「莨※[#「※」は「くさかんむりに宕」、第3水準1−91−3、62−8]文《ろうとうぶん》」の中に、
[#ここから2字下げ、「レ」は返り点]
拙者《せっしゃ》性癖有レ時吸レ之、若而人《じゃくじじん》欲レ停レ之未レ能、聊《いささか》因循至レ今、唯|暫《しばらく》代レ酒当レ茶|而已歟《のみか》。
[#ここで字下げ終わり]
と記している。
 しかるに、幕府は間もなく喫煙をもって無益の費《つい》えとなし、失火の原因となり、煙草の植附けは田畑を荒すなど種々の弊害あるものとして、これを禁止するに至った。「慶長年録」慶長十四年の条に、
[#ここから2字下げ、「レ」は返り点]
七月、タバコ法度《はっと》之事、弥《いよいよ》被レ禁ト云々、火事其外ツイエアル故也。
[#ここで字下げ終わり]
と見えているが、これが恐らくは喫烟禁止令の初めであろう。
 この後《の》ち慶長十七年八月に至って、幕府は、一季居、耶蘇教、負傷者、屠牛《とぎゅう》に関する禁令とともに、煙草に関する禁令をも天下に頒った。
[#ここから2字下げ、「レ一二」は返り点]
一、たばこ吸事|被二禁断一訖《きんだんせられおわんぬ》、
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