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起し得て妙なりと手を拍って自ら喜び、更に二の句を次ごうと試みたが、どうしても出ない。出ないはずである。起句が余りに荘厳であるから、如何なる名句をもってこれに次ぐも、到底竜頭蛇尾たるを免れないのである。千思万考、推敲《すいこう》百遍、竟《つい》に一辞をも見出す能わずしてその筆を投じてしまった。
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 六八 筆記せざる聴講生


 ブラックストーン(Blackstone)が英国空前の大法律家と称せられてその名声|嘖々《さくさく》たりし当時の事であるが、その講筵《こうえん》をオックスフォールド大学に開いた時、聴講の学生は千をもって数え、満堂|立錐《りっすい》の地なく、崇仰の感に打たれたる学生は、滔々として説き来り説き去る師の講演を、片言隻語も漏らさじと、筆を飛ばしておった。この時聴衆の中に一人の年若き学生がいた。手を拱《こまね》き、頭を垂れ、眼を閉じて睡《ねむ》れるが如く、遂にこの名講義の一言半句をも筆記せずして講堂を辞し去った。その友人がこれを怪しんで試にこれに問うて見ると、かの青年は次の如くに対《こた》えた。
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