ネる語を用いている。この語は何人が造ったのであるかは確かに知らぬが、あるいは一八二一年のクリューベルの「ヨーロッパ国際法」(Klueber, Europaisches[「a」はウムラウト(¨)付き] Voelkerrecht)などが最も古い例の一つではないかと思う。
 我邦では始めは「万国公法」という名称が一般に行われた。これは米人|丁※[#「※」は「題の頁の代わりに韋」、第4水準2−92−15、182−2]良《ウィリヤム・マーチン》(William Martin)がホウィートンの著書を支那語に翻訳してこれを「万国公法」と題し、同治三年(我元治元年)に出版したのに始まったのである。この書は翌慶応元年に東京大学の祖校なる開成所で翻刻出版せられたが、これまで鎖国独棲しておった我国民は、始めて各国の交通にも条規のあることを知ったのであるから、識者は争うてこの書を読むが如き有様であった。故にこの書は最も広く行われ、この書を註釈しまたは和訳した「和訳万国公法」「万国公法訳義」などの書も広く行われ、また開成所でも丁※[#「※」は「題の頁の代わりに韋」、第4水準2−92−15、182−8]良の「万国
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