めて多かったが、この条目は殆んど全部仮名を用いてある。「大日本古文書」に収めてあるものは、漢字が割合に多いが、これは原本を謄写した際に改めたものらしい。あるいは当時の官民中漢字に通ぜざる者が多かったから、通読了解に便ずる立法者の用意に出でたものであるかも知れぬ。
 稙宗がこの法令を制定するに当って、その体裁を貞永式目に倣うたことは、貞永式目に、
[#ここから2字下げ、「レ一二」は返り点]
於二先々成敗一者、不レ論二理非一、不レ及二|改沙汰《あらためざた》一、至二自今以後一可レ守二此状一也。
[#ここで字下げ終わり]
とあるに倣うて、その巻首に、
[#ここから2字下げ]
せん/\のせいはいにおゐてハ、りひをたゝすにをよハす、いまよりのちハ、この状をあひまもり、他事にましハるへからす、
[#ここで字下げ終わり]
と記し、神社の事を冒頭に置き、また巻尾の起請文も貞永式目のと殆んど同一の文を用い、終りに数行の増補をなしたるのみなるに依りてこれを知ることが出来る。しかしその規定の内容に至っては、概《おおむ》ね創設に係り、貞永式目を踏襲した如く見えるものは少ないようである。ことに私法に関する規定は
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