がくがく》たる※[#「※」は「言+黨」、第4水準2−88−84、21−7]議《とうぎ》、万衆に処世の大道を教うるは、皆これ学者の任務ではないか。学者をもって自ら任ずる者は、学理のためには一命を抛《なげう》つの覚悟なくして、何をもってこの大任に堪えられよう。学者の眼中、学理あって利害なし。区々たる地位、片々たる財産、学理の前には何するものぞ。学理の存するところは即ち節義の存するところである。
ローマの昔、カラカラ皇帝|故《ゆえ》なくして弟ゲータを殺し、直ちに当時の大法律家パピニアーヌス(Papinianus)を召して、命じて曰く、
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朕、今ゲータに死を賜えり。汝宜しくその理由を案出して罪案を起草すべし。
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と、声色共に※[#「※」は「勵−力」、第3水準1−14−84、22−4]《はげ》しく、迅雷《じんらい》まさに来らんとして風雲大いに動くの概があった。これを聴いたパピニアーヌスは儼然《げんぜん》として容《かたち》を正した。
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既に無辜《むこ》の人を殺してなお足れりとせず、更にこれに罪悪を誣《し》いんとす。これ実に第二の
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