ろにある。体力のすべてを動員し、研究のすべてを尽し、修正に修正を重ねて完璧なものにするのが油絵である。そしてそれがためには断じて中途で挫折することのない熱烈な意欲が必要なのである。
一体人間の行為である以上、誰の場合でもそこに誤ちがないと断定することはできないが、その誤りを改め、更に改め直して最後の完成に到達しようとするのが、油絵の行き方である。その点日本画とは非常な相違がある。日本画の場合にも、何枚も描き直すということはあるであろうが、画面に対する気持としてはむしろ絶対に描き直しをしないという心持の方が尊重されるのではないかと思われる。そこに日本画の特色のあることも見落せないが、彼我の特色を混同して見ることは大いに注意しなければならぬ。
油絵は与えられた一枚の画布を、どこまでも修正することができ、そこがまた特色なのである。そして出来上ったものが少しも渋滞の跡を止めないものになって始めて完成した作品と言い得るのであり、またそこまで修正が利きもするのである。油絵の中でもスケッチ風にサラッとしたものもあるが、真のタブローはあくまでもかかる土台の上に立っているのであって、その最後まで追求
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