れわれ自身の手で把握しなければならないのである。
 フランスの美術も、一般的に見ればそこにかなり低級なものもあるが、傑出している人の実力に至っては遺憾ながら日本の美術家と同列に論ずるわけにはゆかない。その第一の理由として考えられるのは、先ず彼我美術家の制作に対する態度に甚だしく懸隔があることを指摘しなければならぬ。フランスの大画家といわれる人を見ると、その悉くが非常なる熱意を持ち続けて、最後まで押し通している。その熱意の猛烈なることには、日本人のような淡白な人種はただ驚嘆するばかりであるが、彼等の堂々たるタブローは結局そうした素晴らしい熱意の集積である事実に対し、われわれは大いに反省すべきであろうと考えるのである。
 もちろんそれには体力の相違ということもあるであろうが、日本の批評家の中には、どうも描きこみ過ぎている、もう少しアッサリやって貰いたい、などという人が多いのを見ると、油絵の本質というものが案外解っていないのではないかという気もする。油絵の本道を知らずに、徒らに日本人の趣味からそれを見ようとすることは大変な間違いである。
 油絵の本質は、どこまでもどこまでも突っ込んで行くとこ
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