して慚死《ざんし》せしむるものさえ少なからず。内外人の共に許す所にして、即ち我が大日本の国光として誇るべきものなり。もしも年来日本男子をしてその醜行を恣《ほしいまま》にせしめて、一方に良家婦徳の凜然《りんぜん》たるものなからしめなば、我が社会はほとんど暗黒世界たるべきはずなるに、幸いにしてその然《しか》らざるは、これを良婦人の賜《たまもの》といわざるを得ず。
然るに今日において、未だ男子の奔逸《ほんいつ》を縛《ばく》するの縄は得ずして、先ずこの良家の婦女子を誘《いざの》うて有形の文明に入らしめんとす、果たして危険なかるべきや。居《きょ》は志《し》を移すという。婦女子の精神|未《いま》だ堅固ならざる者を率いて有形の文明に導くは、その居《きょ》を変ずるものなり。その居|既《すで》に変じてその志《し》はいかに移るべきや。近く喩《たと》えを取り、今日の婦人女子をして、その良人《りょうじん》父兄の品行を学ぶことあらしめたらばこれを如何《いかん》せん。試みに男子の胸裡《きょうり》にその次第の図面を画《えが》き、我が妻女がまさしく我に傚《なら》い、我が花柳に耽《ふけ》ると同時に彼らは緑陰に戯れ、昨
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