文面を正面より受取り、その極端を行わんとするは、とても実際に叶《かな》わざることなれども、さりとて教えの言として見れば道理に差支《さしつかえ》あるべからず、ただ独り女子のみを責むることなく、男子をもこの教えの範囲内に入れて慎む所あらしむれば、その主義|甚《はなは》だ美なるもの多し。
例えばその文の大意に嫉妬の心あるべからずというも、片落《かたおち》に婦人のみを責むればこそ不都合なれども、男女双方の心得としては争うべからざるの格言なるべし。また姦《かしま》しく多言《たげん》するなかれ、漫《みだ》りに外出するなかれというも、男女共にその程度を過ぐるは誉《ほ》むべきことにあらず。また巫覡《ふけん》に迷うべからず、衣服|分限《ぶんげん》に従うべし、年|少《わか》きとき男子と猥《な》れ猥れしくすべからず云々は最も可なり。また夫《おっと》を主人として敬うべしというは、女子より言を立てて一方に偏するが故に不都合なるのみ。けだし主人とするとは敬礼の極度を表したるものなれば、男子の方より婦人に対し、夫婦の間は必ず敬礼を尽し、ただにその内君《ないくん》を親愛するのみならず、時としては君に事《つか》うるの
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