》は甚だ美にして、今日の人の家を成し国を立つるに最も適当し、これに反するものは必ず害を被《こうむ》りて免るべからざること、既に明らかなれば、理論上の正邪はともかくも、一国人民として自国自家のために、決して軽んずべからざるの大義にして、即ち我輩がいかなる事情に逢うも、断乎として一毫をも仮さざる由縁《ゆえん》なり。
またあるいは説を作り、西洋文明の人と称する者にても、その男女の内行決して潔清《けっせい》なるにあらず、表面はともかくも、裏面に廻りて内部を視察すれば、醜に堪えざるもの多し、何ぞ必ずしも独り日本人を咎《とが》むるに足らんなどいう者なきにあらず。これは我が国の上流、殊に西洋家と称する一類の中に行わるる言なれども、全く無力の遁辞《とんじ》口実たるに過ぎず。そもそも人生の気力を平均すれば至って弱き者にして、ややもすれば艱難《かんなん》に敵して敗北すること少なからざるの常なり。然るに内行を潔清に維持して俯仰《ふぎょう》慚《は》ずる所なからんとするは、気力乏しき人にとりて随分一難事とも称すべきものなるが故に、西洋の男女独り木石《ぼくせき》にあらずまた独り強者にあらず、俗にいう穴探《あなさ
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